疑惑のグロス

とっさにほっぺに手を触れて確認してみる。

こないだは、起きたらよだれの水たまりができていた。


……良かった、今日はさらっとした肌触りで。

こんなんだから恋も叶わないのかなって、朝から自己嫌悪に陥りたくないもの。


私の口周りとは正反対に、外はかなりの雨が降っていた。


こりゃ、あの二人のデートも台無しね。

そして、週明けにはあの噂が広まっていて……二人の仲も台無しね。


そっとカーテンを閉め、タオルケットにくるまると、再び夢の中へといざなわれた。




「苑美!いつまで寝てるの!」


この声の主に、心地よい世界から現実へ引き戻されているのもいつものお決まりだ。

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