疑惑のグロス

とにかく、女性として魅力がまったく見えないというのが私の見解だ。


そんな二人が恋に落ち、熱く燃え上がった時期はわずかながらでもあったわけだ。

結婚って、異性とつきあうって、そんなものなのかしら。

一番身近なあの二人を見ていると、私が理想を高く掲げたくなるのは仕方のないことだと思うわ。




朝は、バケツをひっくり返したような土砂降りだったのに、今はうっすらと薄日が差すほどまでに天気が回復していた。


「おお苑美。随分とごゆっくりだな」


久々に土曜出勤をまぬがれたお父さんは、嬉しそうな顔でゴルフクラブを磨いていた。


ゴルフなんて行く暇がなくて、日曜日にたまに打ちっ放しに行く程度なのに。

それでも、そこに唯一の趣味という肩書きをつけたがっている。


「休みの日だもん。寝るくらい好きにさせてよ」

「誰も寝てたら駄目だなんて言ってないだろう。

ほら、今日はお父さんが豆を挽いたコーヒーだから美味しいぞ」


そう言って、マグカップにコーヒーを注いで手渡してくれた。

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