疑惑のグロス

でもどんなに願ったところで、松原くんが私の横で笑ってくれるなんてこと、実現できそうにない。

どんな相手だろうとも、自分が好きだと思った人との恋が叶ったお父さんとお母さんは、やっぱりすごいのかもしれない。




自分のコーヒーもカップに注いだお父さんは、また床に座ってあぐらをかいた。

どの子もせっせと一生懸命磨くけど、打ちっ放しで使うのは、だいたいピッチングが多いんだ。

グローブも靴も、それなりに汚れてはいるけれど、たいして上手じゃないって笑っている。

しかもそれは謙遜じゃなく、本当にそうなんだろうって予想はつくから余計に可笑しい。


だけど、それでもお父さんは本当に楽しそうだ。

……いいな。

今日の私には、ちょっぴり羨ましく感じるよ。

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