疑惑のグロス
12:訪れた真実

彼の口から、私の名前が飛び出たことにまず驚く。


なんで、私の名前を知ってるの?

彼とは入社式以外、まともに喋ったことなんてないはずだ。

それなのに、顔を見て名前が言えるなんて。


――しかも、今日はすっぴんだというのが余計に恥ずかしい気持ちを押し上げる。


「近くっていうか……家、斜め前で……」


とっさにコンビニの袋を後ろに隠した。

目線を落とした足元にまた、ため息が出そうになる。

ああ、ボロのスニーカーなんか履くんじゃなかったよ。


ていうか松原くん、それよりなんでココにいるのよ。

来るなら来るって言ってくれないと、私にも心構えってものが必要なんだってば。

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