疑惑のグロス
「ありがとう。助かったよ。
お礼に今度コーヒーでもおごるから」
ゆたが差し出したフィカスプミラを手に、彼はまぶしい笑顔をこちらに向けた。
「松原さん。
良かったら、うちでコーヒー飲んで行きませんか?
苑美ちゃんも含めた3人で集まるだなんて、なかなか機会ありませんから」
「えっ?」
……いつからこんな配慮ができるようになったんだろう。
いつまでも子供だというイメージしかなかった私には、そんな言葉が言えるようになった姿は違和感でいっぱいだ。
「そうだな。じゃあ、お言葉に甘えようかな。
車、止めておいても大丈夫?」
店頭に2台ほどの駐車スペースしかないのを気にした彼に、おばちゃんは心配要らないわよ、と笑った。
「そんなに気にするほどお客さんなんて来やしないって。
それに、うちは車より徒歩のお客さんが多いしね」
大柄の身体を揺らし、嬉しそうな顔で、さあどうぞと促した。