疑惑のグロス

閉めた部屋の扉に背中をつけると、体内の空気を抜くように大きなため息をついた。


彼は私のこと、覚えていてくれた。

顔も、出来事も、そして名前までも。


内線での相手が私とわかって話してくれていた。

そして、叶うかわからない「今度」の約束も貰った。




――4年間、ひっそりと想いを寄せ続けていた人に。




鼻の奥がツーンとして、固く閉じた筋の隙間から涙がにじみ出て来た。


なんだかとても救われた気分だ。

身体の芯から上がった温かなぬくもりで、静かに落ち着く自分を感じる。


叶わぬ恋だとわかっていても、想い続けることは自由だ。


どうせなら、相手が私のことを嫌いだと口にするまで焦がれていたい、そんな心持ちだった。

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