舞い降りた羽
―prologue―
今日は、とてもとても悲しい日。



泣き叫ぶだけじゃ足りないくらい悲しい日。



灰色の雲がゴロゴロと鳴り、もうすぐ雨が降るよと予告をする。



漆黒の衣でその身を包み、誰もが泣いているなか、まだ幼い少女だけが無表情で佇んでいた。



少女は、天王寺 月(テンノウジ ルナ)と書かれた石に赤い蕾の薔薇を一本供えた。



ポツン……。



薔薇の花弁に水滴が落ちた。



到頭、雨が降ってきた。



皆は黒い傘を広げ、行ってしまった。





「濡れてしまいます」





その中の一人が私に傘を差した。



だが少女は「雨なんてどうでもいい」と言うようにその場に残った。
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