舞い降りた羽
ピンポーン



誰よ……。



人が懐かしい夢を見て泣いているのに。





「はい……。」





重い身体を起こし、玄関へ向かう。



焦げ茶色の扉に体重を預け、覗き穴でその正体を確かめる。



――誰もいない……?



扉を開けるが、やはりそこには誰もいなかった。



無駄足だった。



扉を閉めようとすると、ニャーという泣き声。



鈴付きの白い首輪をした灰色の子猫だった。



瞳の色が珍しいオッドアイでとても綺麗だった。





「どうしたの? 迷子かな?」





私は膝を抱えるようにしゃがみ、子猫を撫でた。



首輪がついているなら、裏に住所か名前が書いてあるはず。



だが、首輪の何処を見ても名前さえ見つからなかった。



――ん?



口に何かを咥えている。





「ネコちゃん、何を咥えてるの?
私に見せてくれる?」



「ニャー。」



「ありがとう。」





意外と大人しく渡してくれた。



咥えていたのは、千切られたメモだった。



『黒き蝶から青き蝶へ』



嘘……っ。



涙が込み上げてきた。



子猫は相変わらず、可愛らしく「ニャー。」と鳴いている。



今日は、いろんな感情が私の中を出入りした。



懐かしい夢に悲しくなって。


メモの内容に驚いて。


彼が帰ってきたことに嬉しくなった――



帰ってくるの遅いよ……。



いつまで、私を待たせるつもりだったのよ。



――でも。





「おかえり……。」





いつまでも、忘れずに、待ってて良かった。
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