舞い降りた羽
宝石箱の奥の方から今まで大切にしまっていたものを手に取る。





「蝶凛……。」





ビクッと体が反応した。



扉を閉め忘れていたことに今頃気付いた。



開いている扉の前には、悲しそうな侑子の顔があった。



いや、悲しいというより不安という言葉が相応しいだろう。



侑子の目は、私の手の中にあるものを捉えていた。





「その格好といいネックレスといい、まるで彼に気付いてもらいたいと言っているようね。」





その言葉に心臓がドクンという。



私は白いワンピースを着ている姿を彼以外の人に見せたことがなかった。



親友の侑子にさえ、見せたことはなかった。



極めつけは、彼が私の誕生日にくれたこの蝶のネックレスだった。



――まだ蝶達が生きていた頃、彼が私にモルフォ蝶のネックレスをくれた。



そして、「自分には黒アゲハ蝶がある。」とネックレスを見せてくれた。



私は彼に2つネックレスを交換しないかと提案した。



理由は、私達はお父様に引き離されると分かっていたから。



それと、離れ離れになってもお互い見つけられるように。



でも、私は彼に嘘をついた。



交換する本当の訳を言わず、彼には「交換した人達は互いに愛を誓ったという意味になるから。」と嘘をついた。



大好きな人に嘘をつくことは、とても辛いことだった。



当時の私には、交換するためにその方法しか思いつかなかった。



ただ、彼に会いたかった――



「昨日、七原さんのお店ですれ違った人が彼なの?」





ゆっくりと私に近づく侑子。



私はその質問に声が出なかった。



頷きもしない私に再び訊ねる。





「蝶凛とモールで別れてから、もう一度七原さんのお店に行ったの。
それでね、七原さんに黒服の人のことを尋ねたの。」
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