舞い降りた羽
黒服の人と聞いて脳裏に蘇ったのは、彼の首元からはみ出した、モルフォ蝶のネックレスが光に照らされていた姿。



はっと顔を上げ、侑子の次の言葉を待つ。





「七原さんから聞いた情報によれば、先週あたりからよくお店に来るようになったみたいで、蝶凛のようにいつもカフェラテを注文するそうよ。
それから、お客さんの服装をよく見てて、お客さんの注文に聞き耳を立ててるそうよ。

……正直、何をしたいのかさっぱりだわ。」





いつもカフェラテを注文する。


お客さんの服装をよく見ている。


お客さんの注文に聞き耳を立てている。



3つのキーワードが頭に焼きつく。



足元から「ニャー」と泣き声が聞こえる。



子猫を抱っこすると、侑子から熱い視線を受ける。





「この子猫、人懐っこいわよね。
名前、なんていうの?」





まだ名前つけてなかった。



何にしようか考えながら、子猫を撫でる。



……ん?



頭のシマ模様が、蝶の模様に似ている。





「レイラ……っ。」



「レイラか。いい名前だねぇ。」





驚きのあまり発してしまった名前が、子猫の名前になってしまった。



「レイラ……?」と呼ぶと、「ニャー」と返事をする。



どうやら人間の言葉を理解しているようだ。



自分の名前はレイラだと覚えてしまったか……。





「で、用意はできた?」



「後はネックレスを付けるだけだから、玄関で靴履いて待ってて。」



「りょーかい。」





侑子が部屋を出るのを見届け、もう一度ネックレスを見つめる。



薔薇のように鋭い棘を持つ美しい蝶……。



自分を傷つけると知っていても、愛おしく思う。



蝶に魅入られた自分自身。



そんなことは自覚している。



それでも、私は永遠に蝶を見に纏う。
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