舞い降りた羽
「さてとっ!」





侑子がふぅと一息つき、自分の頬をパチンっと叩いた。



叩かれた頬から現れたのは、玄関で見たときのような満面の笑顔だった。



それを見てほっとしたのか、私も自然と笑顔になった。





「七原さんのお店、行こっか。」





「はいはい。」と面倒臭そうに答え、「侑子は七原さんが好きねぇ。」と付け足した。



すると、みるみる侑子の顔が赤くなっていった。



それを見て、やっぱり……。と私は確信した。





「べ、別にそんなんじゃないわよ!
イケメンだから、見惚れてただけっ。」





昨日、私と別れてからお店に行ったって言ってたじゃない。



というか、既に見惚れてるんだから、好きってことじゃないの。





「ターゲットが見つかってよかったわね。
七原さんと付き合えば、合コンには行けないもんね。」





これでやっと、私は合コンという地獄から解放される。



私には待っている人がいるのに、「足りないから来てほしい。」って誘うし……。





「蝶凛と別れてから七原さんと話したのは、黒服の人のことだけよ。
……私、蝶凛の様子がおかしいのにすぐ気付いたから。」





――そっか。そうだよね。



侑子は私のことを一番知ってるもんね。



侑子の手を取り、小さく駆ける。





「なら、早く行こう! 七原さん、侑子のこと待ってるかもね。」





驚く侑子に振り向き弾んだような声で言う。



その答えに「うん……っ。」と照れながら返す。
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