舞い降りた羽
「昨夜ぶりだね、侑子ちゃん。」
昨夜っ!?
私達が別れたのって、まだ夕方になる前だったよね。
恥ずかしそうに返す侑子の反応を見る限り、本当のようだ。
「こんにちは……。」
侑子に声につられ、私も挨拶を交わす。
「そうそう、蝶凛ちゃん。
黒服の――」
そこまで七原さんが言いかけたとき、店内に鈴が響いた。
その者は店内を遠目で見てから、店長がいるカウンターへ歩き出した。
勿論、傍には私と侑子がいる。
その人が誰に話しかけようとしているのか、帽子が邪魔をして目線が見えなかったので、全く分からなかった。
「すみません。」
一瞬でも、自分の方へ向かって歩いているのではないか、と思った。
だが、その予想は外れ男は店長に話しかけた。
鞄の中から、なにやら一枚の紙を取り出し店長に見せる。
「――この方を知りませんか?」
店長がその紙を見た直後、鋭い目つきで私を見た。
七原さんの笑顔しか知らない私は少し怖くなって、つい、目を逸らした。
「……見かけない方ですね。」
誰かの写真だったのだろうか。
男は店長にだけ見せていたので、私と侑子は見えなかった。
「そうですか。
分かりました。」
その声は残念だったのか悲しかったのか、私には分からなかった。
写真らしきものを鞄にしまうと、もうここには用はない、とでもいうかのように扉へと向かった。
私の片目には黒服の男の後ろ姿が映り、もう片方には彼の後ろ姿が映っていた。
――気付いたときには、行動していた。
言わなくちゃ……。
咄嗟に、男の服を掴んだ。
「……何か?」
降ってきたのは、冷めきった声と冷たい目だった。
怖かった。
でも、こんなところで引き下がるわけには行かなかった。
もし、この人が彼だとしたら、どうすれば私のことを分かったもらえるだろうか。
侑子や七原さん、誰にも知られずに私を分かってもらう方法。
ネックレスや白いワンピースだけじゃ分かってもらえなかった。
どうすれば――
沈黙がとても長く感じる。
周りはにぎやかなのに、ここだけ……。
私とこの人だけが静けさを保っていた。
……そっか。
昨夜っ!?
私達が別れたのって、まだ夕方になる前だったよね。
恥ずかしそうに返す侑子の反応を見る限り、本当のようだ。
「こんにちは……。」
侑子に声につられ、私も挨拶を交わす。
「そうそう、蝶凛ちゃん。
黒服の――」
そこまで七原さんが言いかけたとき、店内に鈴が響いた。
その者は店内を遠目で見てから、店長がいるカウンターへ歩き出した。
勿論、傍には私と侑子がいる。
その人が誰に話しかけようとしているのか、帽子が邪魔をして目線が見えなかったので、全く分からなかった。
「すみません。」
一瞬でも、自分の方へ向かって歩いているのではないか、と思った。
だが、その予想は外れ男は店長に話しかけた。
鞄の中から、なにやら一枚の紙を取り出し店長に見せる。
「――この方を知りませんか?」
店長がその紙を見た直後、鋭い目つきで私を見た。
七原さんの笑顔しか知らない私は少し怖くなって、つい、目を逸らした。
「……見かけない方ですね。」
誰かの写真だったのだろうか。
男は店長にだけ見せていたので、私と侑子は見えなかった。
「そうですか。
分かりました。」
その声は残念だったのか悲しかったのか、私には分からなかった。
写真らしきものを鞄にしまうと、もうここには用はない、とでもいうかのように扉へと向かった。
私の片目には黒服の男の後ろ姿が映り、もう片方には彼の後ろ姿が映っていた。
――気付いたときには、行動していた。
言わなくちゃ……。
咄嗟に、男の服を掴んだ。
「……何か?」
降ってきたのは、冷めきった声と冷たい目だった。
怖かった。
でも、こんなところで引き下がるわけには行かなかった。
もし、この人が彼だとしたら、どうすれば私のことを分かったもらえるだろうか。
侑子や七原さん、誰にも知られずに私を分かってもらう方法。
ネックレスや白いワンピースだけじゃ分かってもらえなかった。
どうすれば――
沈黙がとても長く感じる。
周りはにぎやかなのに、ここだけ……。
私とこの人だけが静けさを保っていた。
……そっか。