舞い降りた羽
思い出そうとすると、いろんなことが思い出せる。



大切にしていたからかな……。



男の人を見上げると、帽子で隠れていた顔がはっきりと見える。



でも、今の私の瞳にはその姿は映っていない。





「――あの時も燃えるような空が広がっていましたね。」





意表を突かれたようだった。



その時にやっと、掴んでいた服を放したが、男の人は何処にも行かなかった。





「私はあの時も泣いていました。」





私を見下ろしていた冷たい目が、段々温かくなっていくのを感じた。



でも、それは表情に表れない。





「あの時も私を慰めてくれました。」





黒服の人がふっ、と笑った気がした。



これで人違いだったら、嫌だな……。



人違いだったらどうしよう。



そう思うと、みるみる目に涙が溜まった。





「――貴方は知っていますか? 彼岸花の花言葉を。」





もし、私が待っていた貴方なら、早くそう答えてほしい。



でも、人違いなら「知りません。」と言ってほしい。



この場から、早く立ち去りたいから。
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