舞い降りた羽
バサッ……。



傘が落ちる音がした。



一瞬、何が起きたのか理解できなかった。





「身体が冷たくなっておいでです。
お辛いお気持ちは分かりますが、お嬢様のお身体が心配です」





抱きしめられて……。



小さな身体が長い腕に包み込まれている。



彼の手にそっと手を重ねると、とても暖かく感じた。



その時、初めて自分の身体が手の先まで冷えていることが分かった。



――お母様が生きていれば、いつものように注意してくれるだろう。



『早く暖めないと、風邪をひいてしまうわよ。』



抱きしめて冷えた身体を暖めてくれた……。



彼のぬくもりはお母様とは違う優しさを感じた。





「……帰ったら、お母様のように暖めてくれますか?」





お墓を見つめていると、お母様が大好きだった薔薇が目に入った。



私が供えた薔薇は、雨にうたれながらも誰に頼ること無くその美しい姿を保とうとしている。



いつかは枯れてしまう薔薇がこうして少しでも……。と必死でいる。



お母様に甘えていた私だが、お母様はもうこの世にはいない。



だから、自分がしっかりしないといけないが、今はお母様が亡くなったことがショックで誰かに傍で支えてもらわないと、壊れてしまいそうだった。





「もう、一人にはしませんよ」





その言葉には驚いたが、振り返った時に見た彼の笑顔にも驚いた。
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