舞い降りた羽
テーブルに目をやると、モルフォ蝶が描かれたカップに入ったカフェラテがあった。



まだ注文していなかったので不思議に思い、見上げると、店長の姿。





「いつも来てくれてるから、サービス。
最近、疲れてるみたいだから、甘いものは効くよ。」





店長と話すのは、初めてだった。



栗色の髪と深い黒い瞳が印象だった。



彼は俗で言うイケメンで、親友の侑子が鷹の目になりそうなくらい美形だった。



「ありがとうございます。」と笑顔を向け、一口だけ飲んでみる。





――私が好んで飲む味だった。



覚えていたのか、まぐれで当たったのか、と店長をもう一度見る。





「いつもそれを飲んでいたから。
その味、好き?」





首を傾げる仕草に小さくドキッとなる。



普通の女子高生なら、彼に一目惚れだろう。



私はただ笑顔を向けながら小さく頷いた。



それを見た店長は「良かった。」と一言言った。



そして、何かに興味を持ったのか訊ねる。





「お嬢さん、お名前は?」



「えっと、蝶凛っていいます。」





答えたのが名前だけで変な顔をされると思ったが、彼は嫌な顔一つせず、ただ笑顔で「可愛い名前だね。」と言ってくれた。





「たまに書いている手紙は誰への手紙かな?」



「えッ?!」





それに続いて「見てたんですか?」と彼に問う。



すると、クスッと笑った笑顔が返ってきたので、余計に恥ずかしくなった。
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