同期が急に変わったら…。〜将生side〜
おう。



『お疲れ様でした。』





営業1課の部下たちが

一人一人帰って行く。






もう遅いオフィス内では

いずみがパソコンの画面を

黒くしていた。







あいつ、仕事が終わったようだな。

よく頑張ってる。






いずみは、

俺のデスクの前に立ち

真面目な顔で書類を提出する。






『課長、遅くまで申し訳ありません。』

『いや。お疲れさん。』






オフィスには、

俺といずみだけになっていた。





『よし、帰るか。』

『はい。』






いずみは、

俺が課長をしている営業1課の主任。

いわゆる、直属の部下だ。






であると同時に

俺が信頼している同期の友人の一人。






俺は、部下が残業している時は、

出来るだけオフィスに

残る事にしている。





自分の仕事は、どれだけでもある。





うちに帰ってやるのも

会社でやるのも、

どうせ一緒だ。





今の時間は9時を過ぎている。

さすがに腹も減ってきた。






明日は休み。






いずみと飲みにでも行こうと

帰りの二人きりのエレベーターの中で

いずみを誘ってみる。






『いずみ、飲みに行くか?』

『ううん、やめとく。』






ニコッと笑いながら

いずみは首を横に振った。






『明日休みだろ?』

『そうだけど。』

『……。』






やっぱりダメか。

まあ、断られるのは想定内。






いずみは、チラッと俺を見て、

いつもの優しい笑顔と

微かに困った表情も見せて






『ご飯なら
彼女と一緒に行きなよ。』





と言う。






はっきり言って

もうこのセリフは聞き飽きた。

最近、こればっかりだ。






『別れた。』

『えっ?』

『だから、別れた。飯付き合え。』

『えっ、あ、え〜!』





いずみは、

顔だけを俺の方に向けて

目を大きくしている。






そんなに驚く事か?

ったく。






俺といずみは、

よく一緒に食事に行ったり

飲みに行ったりしている。





普通に週に一度は行ってるだろう。





仕事終わりのタイミングや

その日の気分で

お互いに誘い合っている。





誘う割合は、7:3の割合で

俺の方から、よく誘う。






今日の誘いも俺から。






でも、

まずはバッサリ断られた。






断られる理由は、ひとつ。






俺に彼女ができると、

いずみは一緒に飯に行かなくなる。






もちろん、

飲みに誘っても、

彼女と行けと言って

絶対に一緒に行かない。






俺に彼女がいない時は

殆ど断わらないくせに。






なんで飯くらい行かないんだ?






気に食わないが、

どうする事もできず。






何をこだわってんだか。







で、

俺は彼女と別れた。




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