同期が急に変わったら…。〜将生side〜
いずみに、
『桐谷、悪い。先に行く。』
と声をかけると、
いずみはテーブルに身を乗り出して
『課長〜、後で聞かせて下さいよ〜。』
と、小さな声で言ってきた。
ムカつく。
俺の気も知らないで。
ん?
……どっかで聞いたセリフだな。
我が身にも降ってきたか。
『やっぱり仕事してりゃ良かった。』
…思わず本音が漏れた。
社食を出ると、
秘書課のその子が待っていた。
『向こうで、お話を。』
と、人けのない方へと歩きだす。
仕方なくついて行くと、
非常階段の
地下への踊り場に案内された。
こんな場所、よく知ってるな。
変なところに感心しながら、
彼女の言葉を待っていた。
『あの、私。
秘書課の高丘といいます。
私、あの、
ずっと前から藤森さんの事を……。』
イラつく。
もう勘弁してくれ。
『何?』
『あの、
藤森さん付き合ってらっしゃる方
いらっしゃるんですか?』
『いや、いないけど。』
『あの、良かったら、
私と付き合って下さいませんか?』
『あー、悪い。
君とは付き合えない。
好きな子がいるから。』
『えっ?
好きな人がいらっしゃるんですか?』
『ああ。』
『あのっ、もしかして…。』
『君に言う必要あるかな?』
『あっ、いえ。』
『そういう事だけど、
もういいかな?急ぐんだけど?』
『あっ、はい。すみません。』
『じゃあ、失礼するよ。』
好きな子、か。
初めて言ったな。
こんな断り方、
未だかつてしたことないよな。
さ、仕事するか。