儚語り
「…………オレが未熟だから、もっと力があれば!」



悔しさで涙が滲む。



「絶対、護れたんだ……空白……どうして、いないんだよ……神様の前に、御柱の人間だろ……?」



崩れた建物の残骸。



残された力で、周りを視廻しても空白だけは見つけられなかった。巫女である母、初音、兄、までは見つけ――先に死者を葬り、最後の最後、残された力で約束の花を一緒に供えて。



力なくふらふらと虚ろな瞳で歩きながら、鬼火は不思議に思う。






何故、自分だけが助かったのか。






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