儚語り
今、この瞬間が。
世界が、終わってしまっても構わない。
桜の花びらが一陣の風でハラハラと散っていく中、少年は見上げている栗色の長い髪の少女と目が合った。
少年の瞳が大きく見開かれる。少女からしたらそれがひどく不思議で、思わず疑問を口にしていた。
「貴方は誰?」
少年は少女を信じられない、と言った顔つきで見ていたが、やがてぽつりと呟く。
「…………おまえ、オレが視えるんだな」
「普通見えるわ」
「常人は視る事すら叶わない。これでも一応、神のはしくれだ」
驚く事を予想していたが、少女は花のような笑顔で言った。
「そうなの、私は里霞(サトカ)。貴方は?」
優しい笑顔。
少年は戸惑いながらも答える。
「…………鬼火(オニビ)」