き み と
「………?」
振り返った彼女は
大きな目を見開いて
俺を真っ直ぐ見つめる。
どくん
静止した時間。
彼女が一瞬不振そうな顔をしたことで、
自分が止まっていると気づいた。
「あ……それ…。」
絵 の下の名札を指さす。
彼女はやっと把握した様子で
ゆっくりと 一回 頷く。
「あの…上手ですね…」
上手く喋れなくて、
もっと他の言葉がある筈なのに、
こんな陳腐なことしか言えなくて、
「…………ありがとう。」
でも 彼女は微笑んだ。
ほんの、少しだけ。
その時間が
ものすごく長くて。
ものすごく短くて。
「潮?…潮ー?」
彼女が立ち去った後も
俺は動けずにいた。
彼女の姿が
目に焼き付いて離れない
持ってかれた、全部。
俺の、全部。
一目惚れ、だったんだ。