き み と
「…透さんは?」
「最近、別れた。」
「ごめん…なさい。」
気まずそうな私に、
透さんはまた 頭を ぽんぽんした。
「いいよいいよ。気にしてない。
まあ…最初からそんなに続くとは思ってなかったから。」
……最初、から………?
「だから、陽奈は
ずっと続くように頑張れよ。」
続く………ずっと……。
私が悩んでいると
透さんが心配したような顔をする。
私はその顔が 好きじゃなかったから
一回 コクリ と頷いた。
「まあその男にもよるけどな!」
「…いい子……だよ。」
私のその言葉に透さんは
一回 寂しそうに笑って
それから 何も言わなかった。
「先輩!」
その 一瞬、後。
私の方に走ってくる 私服の 男の子。
「すいません!待たせて…」
息を切らしている。
いつも制服しか見ていなかったから
とても 新鮮な感じ。
彼 は言い掛けて 一度透さんを見る。
「えっと……。」
「柊透(ひいらぎ とおる)さん。
……私の、おじさん。」
透さんが 会釈すると、
「透さん…さっき話した…アオイ君。」
「初めましてっ!」
アオイ君の 声が
明らかに緊張していた。
「…年下?」
ふと 透さんが私に耳打ちをする。
「…2つ。」
一瞬驚いた顔をしてから
腕時計を見た。
「そうかー…陽奈をよろしくな、アオイ君。
じゃ、俺そろそろ行くよ。」
そう言うと 手を振って、
私たちの前から 立ち去っていく。
「行きましょうか。」
「……うん。」
緊張していた アオイ君 の顔が
いつもの 笑顔 に変わって
私も 少し 安心した。