き み と
01 で あ い
「先輩、飲みますか?」
犬のような人だと思った。
ありきたりな例えだけど。
私が首だけで頷くと、
彼は太陽みたいに笑って
汗をかいたジュースの缶を差し出した。
私には
柊 陽奈(ひいらぎ ひな)
という名前があるのに、
彼は私を 「 先輩 」 と呼ぶ。
別に私は それでも構わない。
「先輩…夏休みは勉強尽くしですか?」
「…そうでも、ない。」
「じゃあ…俺と…遊んでくれますか?」
「…少し、なら。」
「少しでもいいです!」
彼は、また笑った。
彼は、何なのだろう。
いきなり、私の歩く道に現れた、光。
周りを明るくする、光。
本当は 少し まぶしすぎる。
その光に 飲み込まれそうで―――
色のない 私とは
決して 馴染むことのない
別世界の 存在みたいだった。