き み と

入場料は無料。


入り口には
優しそうなおじいさんが一人いるだけ。


外観のまま、
やっぱり中はそれほど大きくなくて、
その中にたくさんの絵が飾られていた。


俺の前を歩く先輩は、
一つ一つの絵を熱心に見ては、
時々絵に触れてみる。


俺はと言うと、
絵は全然分からないけど、
そんな先輩を見ていたら、
それだけで幸せな気分になれた。



殆どの絵を見て、

一番奥へさしかかった時。






どくん





久しぶりの、この感覚。






先輩が最後に立ち止まった大きな絵。






どくん






何だろう。







あの絵に、どこかが、似ている。








別に、同じ物が描かれているわけじゃない。









……色………かな………。









どくん








絵も気になったけど、

もっと俺を釘付けにしたのは



絵に触れる、一人の女性。






あの日の映像が、重なる。





うるさく鳴る、心臓。





どうしようもない、この気持ち。





これを表す、言葉。





「先輩。」







その声で振り返り、


俺を見つめる、大きな目。










「……好きです。」
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