き み と

「そうだ、先輩。」



私は 表情で答える。



「俺今日数学の補習あって…先、帰っててください。」



少し 落ち込んだ様子。


彼が 勉強が得意でないのは
彼の家で偶然見つけた テストの所為で
ちゃんと 認識していた。



「うん…………―――。」



そこで 思い出す。



「あ…私も……居残り。」


「先輩が!?」


「勉強じゃ…なくて…

…林田先生に…呼ばれて…。」

「林田……。」



少し 考える仕草。



「もしかして先輩!学校祭で絵、描くんですか!?」



コクン とうなずく。






林田先生は 30歳くらいの
優しそうな 男の先生。

美術の先生で 美術部の顧問。


一年生の時
私が授業で描いた絵を見て
それから 熱心に 美術部に誘われた。




私は コンクールとかが
性に合わないから 断り続けたけど

それでも先生は あきらめずに
“時々絵を 描きにきてくれるだけでいい”

と言ってくれた。



人に絵を 見てもらうのは好きだから
学校祭 とか 展示会 とか
絵を飾るとき 一回一枚だけ

先生に誘われて 絵を描くようになった。



ちなみに 遙香ちゃんは
美術部の 部長さん。



「…何時くらいまで描いてますか?」


「……できる、まで…かな。」


「見に行ってもいいですか?」



アオイ君は 目を輝かせて


私を見つめていた。


「……ちゃんと勉強…したら、ね。」



「…も…もちろんっ!」
< 26 / 76 >

この作品をシェア

pagetop