き み と
チャイムが鳴って
私たちは屋上を後にする。
残りの授業を1時間 終えて
学校中が 学校祭の準備で 騒がしい。
私と遙香ちゃんは
クラスの仕事を免除してもらい
一緒に美術室に向かう。
「遙香ちゃんは…何を、するの?」
「あたしは今回は絵が2枚と立体が一つ…かな。もう絵、あと1枚描くだけだけどね。」
「そっかあ……すごいね…。」
「そんなことないよ。」
少し 照れくさそうに 笑う。
「それよりさ、陽奈は今回どんなの描くの?」
「…まだ…決めて、ない。」
「そっか。そうだよね、陽奈は。」
「うん。」
遥香ちゃんも 透さんと同じ様に
私の頭に手を ポン と乗せた。
「……子供扱い…。」
少し 膨れてみせると
からかうように笑われる。
「だって陽奈、ちっちゃくてかわいーんだもんっ!」
「今日も仲がいいね。」
声をかけられた方を 振り向くと
めがねをかけていて
細身で背が高くて、
優しそうな顔をした
男の人が立っていた。
「林田先生。」
「柊君、来てくれてありがとう。」
「………い……え。」
「先生!…スーツ汚れてますよ。」
「あー、さっき絵を描いてたら、ちょっと絵の具がね。」
遥香ちゃんが先生に駆け寄って
ハンカチで汚れを拭く。
「先生…これ水無いととれないよー?」
「すまないねー。いつもいつも。」
端から見ると
遥香ちゃんの方が年上みたいだった。