き み と

「ほらっ先生!陽奈!さっさと美術室行くよっ。」



遥香ちゃんの後を
駆け足で 追いかける。



「こんにちはー」



遙香ちゃんが 美術室の戸を 開けると
4人の美術部員が もう 活動をしていた。


それぞれ 挨拶の返事が返ってくる。



「柊君、紙はあっち、絵の具はそれ、筆はこっち。わかるよね?」



一回頷いて 私は準備をする。


場所は 入り口から一番遠い

窓際の 隅。




天気が良くて 陽が窓に差し込んでくる。


道具を一式揃えて 紙の前に座ると


深呼吸をしてから

目を 瞑った。







私は 描くものを 決めない。


私は 私の 心を 描く。





私の 心―――――。






勝手に 手が 動く。



私の 伝えたい 事たちが



握りしめた筆先で 踊る。






時間 に 囚われずに


周り に 囚われずに



この わたしという いれものに


とらわれず に










――――――。





「…………ふぅ………。」



一つ ため息をつくと


部屋が 夕日で 真っ赤に染まっていた。



「そろそろ終わる?」



っっっっ――――!


すぐ斜め後ろから
いきなり声をかけられて

椅子から少し 飛び上がる。



「は……は…遥香……ちゃんっ…。」



「ごめんごめん。さっきからずっと見てたんだけどさ、あんまり集中してたみたいだから声かけられなくて。」


「わ…私こそ……ごめんっ」
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