き み と
「あー疲れた。ちょっとは助けろよ、蒼井。」
「わりわり〜。」
俺も結構美味い
焼きうどんとパフェを食べつつ
からかわれる亮太を眺めるのは
それなりに楽しかった。(笑えた。)
「じゃあ行きますか。」
さっきまでへとへとだった亮太は、
もうピンピンしている。
さすが運動部。
「3Aって…何やってんの?」
案内を眺める亮太に問う。
「…メイド…カフェ?」
「…はぁ!?」
俺の出したでかい声に
周りの視線が集まる。
「もしかして…先輩…!」
「おいコラ待て蒼井!」
俺は3Aの教室へ走りだした。
何だか知らないけど焦っていて。
たくさんの人の間をすり抜けて走ると
メイド服を着た女子が目に飛び込んだ。
二人組でチラシを配っている。
先輩………じゃ…ない。
「おい蒼井…っ!お前……っ本気で走り…すぎ…っ!」
息を切らす亮太と
チラシを配る二人組を無視して、
教室のドアをおそるおそる開けた。
「お帰りなさいませーっ!」
「い…いや…俺…は……。」
甲高い声で店の中に
半ば強制で誘導されそうになる。
ひるむ俺。
「客じゃ…ないんで…――」
「もしかして君、"アオイ君"?」
俺の言葉を無視して
店内に引きずり込もうとする女子とは別の、
制服にエプロンという
普通の格好をした女子が、
俺の名前を後ろ、廊下から呼んだ。
「?……あ…はい?」
見覚えのないその人に少し混乱する。
「やっぱり!陽奈でしょ?」
「…あ……です。」
何だか返事をするのが恥ずかしい。
「待っててね。今呼んでくる!」
そう言ってその人は
教室内へ行ってしまった。
廊下に突っ立ってるしかなくなって、
周りを見回す。
そういえば……
「……あれ?亮太?」
奴の姿が見えなくなって教室を覗くと、
隅で二人のメイドに囲まれて、
顔を緩めて喋っていた。