き み と
「あと…先輩の絵も、見に行きますね。」
先輩はまた頬を赤くして、
しかし今度ははっきりと微笑んだ。
「……ありが……とう。」
その笑顔に、俺は言葉が出ない。
"可愛い"より"綺麗"な気がした。
「陽奈ー!ごめん手伝ってー!」
俺が見とれていると、
それを現実に引き戻すように声がした。
「私………行くね。」
「はい!」
先輩はひらひらと控え目に手を振って
また教室へと入っていってしまった。
余韻を残しつつまた教室の中を見ると、
またしてもゆるんだ顔で
亮太がメイドに手を振っていた。
―――――*
「3年って可愛い人いっぱいいるんだな!」
階段を降りながら
緩んだままの顔を
直そうともしない亮太が言う。
「一番可愛いのは先輩だけどな。」
「言うねぇ、お前。」
亮太は言いながら
さっきの二人のメイドの
アドレスが登録された携帯を見ている。
「つか亮太、お前好きな奴いるんじゃないのか?」
「…な……何のことだよ…。」
少し口ごもったから
これ以上詮索するのは止そうと思った。
「うーんと、俺はこれから美術部見に行こうと思うんだけど、お前は?」
「俺は…外かな。まだ先輩の出店とか見に。」
「じゃあ別だな。」
「おー。教室でな!」
一階へ降りたところで、
俺たちは左右に分かれた。
美術部は学校の端の方の教室で
展示しているらしい。
いろんな部活の作品が
展示されているみたいで、
それなりに生徒や父兄が歩いていた。
俺は迷わずに
美術部の教室に足を踏み入れる。
入り口のすぐ横に
受付の生徒が座っていて、
軽く礼をした。
先輩の絵は仕上がったのを見たから、
そう探す必要もない。
ゆっくり見ていると、
さっきの遥香さんの作品も
たくさん見つけた。