き み と

そしてやっと
先輩の絵の前へたどり着くと、
足を止める。



完成を一回見たけど

それでも先輩の絵は
俺を虜にする不思議な力がある。







最初に見たのとは対照的な



明るい、絵。



海と砂浜と太陽。





違うのに、やっぱり先輩の絵。



やっぱりこの人の絵が好きだ。



それから徐々に下に視線をずらす。





そこにあったものに

俺は息が止まるかと思った。










" うしお "

3年A組 柊 陽奈











不思議な感覚だった。




多分先輩は、俺の名前を知らない。



別に"潮"なんて名前、


知ってもらわなくても

呼んでもらわなくても


良いと思っていた。



だから教えていない。





俺は アオイ でしかない。






それなのに 先輩は

見つけだしてしまった。




その、意味を。




こんなに綺麗で


こんなに魅力的な名前を



どうして黙っていたのかという

後悔を抱かせる。






運命とかそんな言葉じゃなく


ただ



ただやっぱり



俺の好きな人は先輩だと思った。






先輩は何を思いながら



この絵を描いたんだろう。






俺の名前を知ったら



どんな顔をするだろう。









頭の中が 先輩で 溢れかえる。






この気持ちは





どうすれば 伝わるんだろう







どうやって 伝えよう






想いが 確信に 変わった
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