き み と
04 き ず な
*****

学校祭が終わっても


俺と先輩は何も変わらない。



ただ、一緒にいることが多くなった。



「すげーっ!」



秋空の下。


屋上で先輩の作った弁当を広げる。



「……すごく…ない…よ…。」



照れて俯く先輩。



学校祭が終わってからは、
3年生は受験一色のムードになった。



「…おいしい?」



卵焼きを頬張る俺を下からのぞき込む。



「うまいっす!」



先輩は頭がいいから推薦を狙ってて、
勉強もさほどしなくていいらしい。



「…よかった…。」



安堵に肩の力を抜く。



「……いっぱい…食べて…ね?」

「はい!」









先輩に俺の名前の話は教えていない。




言おうと思っているけど



まず自分から

あの絵と同じ名前を
名乗るのが恥ずかしい。



あと勇気もいる。





学校祭から今まで



ずっと俺はこのことを悩んでいた。



「……アオイ…君?」



よっぽど難しい顔をしていたらしく、
ゆっくり弁当を食べていた先輩が
また下からのぞき込んでくる。


「………―――。」


「…?」



ふと下から覗く先輩を見つめた。




…………やばい。

ちょっと。






「………アオイ君?」






小さく動く唇。







……キス……したい。




「……アオイ……君…!」




先輩らしくない大きな声を出されて、
俺は我に返った。
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