き み と
「あ………すいません…。」
「…どうした…の?」
「いや!何でもないです!」
焦って手をぶんぶん振る。
「そっ……か…。」
「はい!」
そして先輩が心配しないように
笑顔を作る。
すると先輩も顔を少し緩めて、俺を見た。
もどかしい、ふたりの時間。
―――――*
「はあーーー……。」
「どうした、そんなため息ついて。」
昼休み終わりの教室。
もうすぐ予鈴が鳴るという時、
まだ教室はざわついていた。
「んー………。」
「何、柊さんのこと?」
先輩と別れて教室に戻ってきた俺は
窓際の席で外を眺めていた。
「……まぁ、そうだけど。」
「お前等ってどこまでいってんの?」
前の席の亮太が椅子に横向きに座って
俺に質問を投げかける。
「………うるせぇ。」
視線を外に向けたまま、目を合わせない。
「ふーん。何もしてないんだ。」
「………うるせぇ。」
亮太が鼻で俺を笑う。
「蒼井って無駄に奥手だよな。中学ん時から。」
「………うるせぇなぁもう。お前とは違うんだよ。」
「でも蒼井の奥手は異常じゃね?なー桜井。」
気がつくと隣の席には
いつの間にか亜美の姿があった。
「まー亮太みたいに軽いのよりはいいけどね。」
「お前等なぁ……。」
好き勝手言う2人に
説明する言葉を探す。
「………緊張…するんだよ……先輩の前だと…。」
「まぁ柊さんと居るときの蒼井、何か無理してる気もしないけど。」
「あーそれ分かるかも。年上相手だしね。」
「おい、勝手に盛り上がるな。」