き み と

無理……かぁ。



「無理はしてないと思う…けど。」


「じゃあお前、柊さんの前で素出してるか?」


「……出せない。」



もう一度亮太は鼻で笑う。



「ほらな。それが無理してるって言うんだよ。」


「嫌われたく…ねーもん…。」


「なんかそんなの、潮っぽくない。」



"潮…!?"と驚く亮太をスルーして
亜美は続ける。




「そんな無理して付き合うなんて、何か違うと思う。…確かに、柊先輩と付き合うようになってからは私たちの前では元気になったけど…。」



「無理してでも好きだから付き合うってのが間違ってんのか?」



「間違いとは言ってないじゃん。ただ付き合うってもっと違うと思う。」



「付き合うのに正しいとか違うとかあんのかよ?…それに俺っぽくないって言うけど俺っぽいってお前に俺のことが分かんのか?俺っぽいって何なんだ?」



「そんなの…私に訊かないでよ!自分で考えればいいでしょ!?」



「お前が言ったんだろ!」








「はいストップ!」





激化した俺と亜美の争いを
亮太が制止する。





「二人とも熱くなりすぎ。桜井が口出すのも間違ってるかもしんないけど、一応蒼井のこと心配して言ってやってんだぞ?女相手に熱くなるなんてらしくねーな。」



「だから―――。」




"らしいって何なんだよ"と
言おうとして言葉を飲み込む。




自分の意見を通すので
精一杯になっていたせいか、
顔を赤くして目に涙をためた亜美に
気づいていなかった。






「………悪い。」




俺がわざと目線を反らして言うと、
亜美は一回だけ頷いた。





それからまた、
乱暴に机に頬杖をついて外を眺める。
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