き み と

「…あの―――!」



一瞬 躊躇うような 仕草。


目を伏せてから いきなり


ぐいっ と顔をあげた。







「潮と別れてください。」









………潮……………?









私の 絵の ……名前?





本当に 何のことか分からない。








「……潮………?」


私が 首を傾げると

彼女は 目を 見開いた。



「もしかして……あなた、

"潮"って……知らないんですか……?」







………知ってる?



………知らない?






なんだかそれが


とても大切なことに 思えてきて



鼓動が 速くなる。






「……彼の名前。

"アオイ"じゃなくて…




……"蒼井 潮"……。」







アオイ君 が………?






何でそんなに 大切な こと。




どうして………?




何で…………?






「潮はあなたと居ると疲れるんです。





本当の潮じゃないんです!」










私と いると 疲れる……?






私が 彼の 重荷…………?









その瞬間



ずっと 奥で







何かが 崩れる 音が した。
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