き み と

家に帰っても

頭に浮かぶのは先輩のことばっかりで




「情けねぇなぁ………。」




ベッドに寝ころんで天井を見つめる。




そこに浮かぶのは先輩の後ろ姿。






俺を拒絶する、背中。






あの背中を見たら追いかけられない。






あんな背中を見たら―――








ふと、一つの考えが頭をよぎる。




「………俺………。」








いきなり 気づいた。








この もやもやした 気持ちが。





「全部……先輩の……。」







先輩が拒絶してたのか…?







もし あの無表情が


感情が無かったんじゃなくて




抑えていたとしたら…?









「俺が……怖かった………?」









俺が先輩を拒絶していた…?





拒絶されるのが 怖くて

勝手に決めつけていた…?






…追いかけてほしいと


――追いかけてくるだろうことを





期待していたとしたら…?






「……ッくしょう!」






俺は教室を飛び出した時のように

頭より先に体が動いていた。





だけど今度目指す場所は
一つしかない。








もしこれが自惚れだとしても




拒絶されたりしても





俺はかまわない。









それでも先輩が好きだ。







悪かったな、亮太。




きっと奴なら礼を言わなくても
分かってくれる。




多分俺がこうなることも
分かっていたんだろう。







目指す場所へひたすら走った。
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