き み と
あまりに急いでいて、
自転車という手段があることを
忘れていたけど、
家に戻るよりも
早く
先輩に会いたかった。
先輩の家には何回も
送っていっていたから、
道順は体で覚えていた。
ギリギリ中学の地区が違う距離。
先輩の家についた途端、
自分の息が切れていることに気づく。
灯り……点いてる……
いざチャイムの前に立つ。
差し出すのは 震える 人差し指。
でも
ここでやらなきゃ、来た意味がない。
もう一度振られても良い。
嫌と言われても良い。
そうしたら、また頑張れば良い。
でも
せめて、君の顔が見たい。
鼓動を抑えて
人差し指でチャイムを鳴らす。
待つ時間がとても長く感じた。
すると、インターホンに出る前に、
玄関のドアが開き――――。
「アオイ、君。」