き み と
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あの日から、3日。



俺はまだ一度も先輩に会っていない。


それでも耐えられる位の覚悟は、
とうに持っていた。






それでも無意識に


廊下で探す

窓の外を探す


自分が少し情けない。




今の俺には、
待ってることしかできない……筈だ。




そんな時に俺を訪れたのは
とても意外な人だった。




「あのね、陽奈今風邪引いて休んでるの、知ってた?」


「あ…いえ。」



学校祭の時にも話した、
先輩の親友の遥香さん。



「あの子の風邪って一回引くと長引いちゃうから、まだ学校これないかも。」


「………はぁ。」





遥香さんはさらっと状況を伝える。


先輩はこの人に
今の状態を伝えていないのだろうか?



でもそれだったら
俺と先輩の連絡手段も無いわけではないし、
わざわざ伝えにこないよな……?



「…あの…。」


「どしたの?あ、長引くって言ってもそんなに重い訳じゃないし大丈夫だよ。」


「あ…いや…違くて…。」



俺が言葉に迷っていると
またしても彼女はさらっと言った。



「今距離置いてるみたいな状況なんでしょ?」


「!……まぁ…はい…。」



あまりにも核心を突かれてひるんだが、
この人は、不思議と
全てを受け入れてくれそうな、
俺をそんな心にさせた。



「陽奈がね、私が休んでることアオイ君に言うな、って言ったの。」


「………はい?」


「私が休んだことでアオイ君が責任感じちゃうんじゃないか、って。」


「…はぁ。」




「だから、言いに来たの。」




遥香さんが言っていることが
全く理解できない。



「あの子、下手くそだからさ、いろいろ。…私あの子に"言わないで"なんて言われたこと、初めてなの。」




急に彼女は優しい顔になった。
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