き み と

「変わったなぁ、って。良い意味でね。だから私は陽奈のお手伝いをしてあげるの。」




まっすぐ、俺の目を見る。




「あの子が変わったのは、絶対あなたのおかげだから。お節介かもしれないけど…陽奈のこと、よろしくね。」




「はい!」






俺は遥香さんの期待に
応えるかのように返事をする。





すると彼女は満足した様に
笑顔で"よし!"と言って、
俺の前から立ち去ろうと歩き出した―――




「そう!」




ら、いきなり振り返った。




「アオイ君に良いこと教えてあげる!」








丁度よく鳴ったチャイムが
昼休みの終わりを告げる。


―――――*




遥香さんと話してから一週間。

彼女のお陰で、
覚悟をしていた気持ちが軽くなって、
俺は普通通りに毎日を過ごしていた。



授業適当に受けて

昼飯食って

放課後に友達とゲーセン行って



でも片時も先輩を忘れたことはなかった。



本当は見舞いに行こうかとも思ったけど
俺は待っている、と言った身。



早く先輩が学校に来るのを
願っているしかない。








   そしてその願いは



翌日に通じることになる。







―――――*






「あ、アオイ君だ。」


「ども。」




遥香さんとは一週間の内に
2回くらいこうして廊下ですれ違って、
挨拶をしていた。




「移動教室ですか?」


「うん。生物の帰り。……あ、今ねー、陽奈が―――。」



彼女がそう言い掛けた時だった。



「遥香ちゃん、おまた、せ―――」





遥香さんの後ろの角から小走りで出てきた


小さい影。
< 57 / 76 >

この作品をシェア

pagetop