き み と

それからも廊下や道で会う度に
顔を青くしてか赤くしてか、
俺から逃げることを繰り返した。



「あー…さすがにヘコむよな…。」


「見てるこっちはちょっと面白いけどな。」



と、からかう亮太も、
あからさまに俺を避ける先輩を
何度か目撃済みである。



「いや……存在無視されるよりはいいかな……。」


「待つんだろ?お前が自分で言ったことなんだからな。」



「んー。」




「まぁあそこまでされたら自信なくすよなー。」



確かに先輩を待つ気持ちはあるけど、

自信は無いに等しいくらいになっていた。



「遥香さんは大丈夫だって言うけど…。」


「あぁ、あの最近お前がよく喋ってる人ね。」



俺がうなだれていると、
隣で亜美が椅子に座る音がする。



「ねぇ、何か3年生の人が亮太のこと呼んでるんだけど。」


「あ、まじ?」



入り口を見ると、学校祭で
亮太が鼻の下をのばして話していた、
元気そうな女の人が二人、
亮太を待っていた。



「はいはーい。」



そこへ向かう奴の後ろ姿を見て、
俺と隣に座る亜美は呆れて溜め息をついた。



「……いいよなぁ亮太は。」



俺はそんな背中を見て、息をもらす。



「な…何が…?」




そう言えば亜美と
言い合いをしたあの日から、
3人で話すことは何度もあったが、
こうやって2人で話すことは
これが初めてだった。




「………軽いとこ?」



亜美は少し笑う。



「まぁ…確かに。」


「でもな…あいつ―――。」



言おうとして言葉を飲み込む。


「あいつ?」


「んーん。何でも。」


「…ふーん。」
< 59 / 76 >

この作品をシェア

pagetop