き み と

沈黙になると、俺は外を向いて、
亜美はそわそわし出した。



微妙な空気が流れる。



「……ねぇ?潮?」



「ん?」



「…大丈夫?」




「うん………まぁ。」



俺の視線は、外に投げ出されたまま。



「…辛い?」


「…うん…。」




「そっか……。」




そこで俺たちの会話は途切れた。



辛いと言うことを口に出すと
余計辛さが身にしみる。






顔を見たい


話がしたい





触れたい



やっぱり俺は意志が弱い。












もう、俺の限界が、来そうだ。


―――――*



気分が沈んでいても


時間は過ぎていく。



その速さは変わらない。






「潮っ。」






外に面した渡り廊下。

今週はそこの掃除当番。




「んあ?」


箒を持ってボーッと
突っ立っていた俺の制服の裾を
誰かが引っ張る。



「ちょっと、来て。」


「?」



その正体は亜美で、

彼女は当番の皆から離れた
廊下の陰に連れて行く。



そこで亜美は俺に向き直った。




「どーした?亜美。」


「……うん。」


「?…掃除終わるぞ?」



亜美は俯いたまま。



「亜〜美〜?」




「潮っ。」



「はい!?」





亜美がいきなり顔をあげた。

心なしか顔が赤い気がする。




一度、大きく聞こえた呼吸。
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