き み と
その背中を見ると、
何だか無性に伝えたくなった。
「俺な…先輩のこと好きなんだ。」
亜美はそのまま足を止める。
「うん、知ってる。」
「先輩じゃないと、だめなんだ。」
「…うん。」
「でも…ありがとう。」
亜美からの返事は、無かった。
「…先……行くね……。」
そう言うと同時に、
彼女は小走りで離れていく。
その声は、泣いていた。
だけど俺は追いかけない。
追いかけられた方が辛いときもある。
そのまま俺は近くの
丁度良い高さの花壇に
ゆっくりと腰掛けた。
「……先輩…。」
声に出して、呼ぶ。
「柊………陽奈……。」
その名前を。
「……陽奈………。」
もう、限界なんだ。
でも、先輩じゃなきゃだめで。
他の誰かじゃ満たされなくて。
だから、
俺は、待たなくちゃいけない。
少しでも、俺を、見てくれれば。
一筋の 粒が 頬を 伝う
「情けねぇなあ…………俺……。」