き み と

その不安そうで泣きそうな顔に


思い切り 笑顔で答えた。








  「陽奈 "で" いいんじゃなくて

    陽奈 "が" いい。」










すると 彼女は目から
たくさんのものを溢れ出させて

素早く俺めがけて小走りする。








そして

いっぱいいっぱい背伸びをして

腕を俺の首に回し、体を俺に寄せた。





先輩はとても小さくて


俺は少し屈む形になる。












耳元で 先輩が 泣く息が

小さく聞こえた。




















「………だいすき……潮………。」














その声に 俺は



この小さな女の子だけが



俺の世界の全ての様な気がした。




俺が 守らなくちゃいけない。







俺が先輩の背中に手を回すと


彼女は腕をほどいて
手を俺の背中に移す。





俺の胸に委ねられた頭。




もう この弱くて小さな ひと を


一生、離したくない。
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