き み と

そうしていると




いきなり先輩はクスリと笑った。





「……潮の心臓………すごく…ドクドク言ってる…。」









「………走った所為です。」







俺はぎゅっ、と先輩を抱きしめる力を
苦しくない程度に強くした。





先輩は嬉しそうに笑う。





「……敬語は…だめ…。」




「……はーい。」






「他の子に……頭…撫でるの……嫌…。」




先輩の わがまま。









驚いたけど



それが嬉しくて嬉しくてたまらない。




「はいはい。」





「………面倒……くさい?」







「全然?」









「……まだ……もうちょっと………この…まま……。」





「何時間でも。」






俺がおどけて言うと



また楽しそうに笑う声が聞こえた。






ふと 思い出したこと。







「ねぇ、先輩?」



「………陽奈。」






今日の先輩は先輩じゃないみたいで


でもすごくかわいくて





これが先輩の素なんだと思うと
どうしようもなく愛しい。






「ねぇ、陽奈?」



「……はい。」
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