き み と
入学式は暇だった。
それからの日々は
クラスで挨拶して
メールアドレス交換して
部活動見学して
俺の高校生活が始まった。
大きな大きな
気がかりなことを抱えたままで。
―――――――*
「何してるのー?」
「桜井。」
「こんなとこでケータイ出してたら、
先生にとられるよー?」
「うん。」
入学して、もう2週間。
学校にも、少し慣れた。
部活は、
亮太にサッカー部に誘われたけど
何も入らないことに決めた。
「蒼井は何もやらないの?部活。」
「うん。」
「そっか、一緒だ。」
「何だ、バレー部やめんの?」
「うん。足、あんま良くないし。」
「そっ、か。」
俺の隣に並んで立つ、桜井。
まだ俺の胸のモヤモヤはあのまま。
皆が帰った放課後、
俺はあの 絵 を携帯に残そうと思った。
「クラス、楽しくなりそうだよね。」
「うん。」
「笹川と蒼井が一緒で良かった。」
笹川(ささがわ) とは、亮太の名字。
「お前なら誰だって仲良くなれるよ。」
「えー、何それ?」
「…そのままのこと。」
桜井の問いに、
携帯を構えたまま答える。
逆光だった。
何回撮っても 絵 が真っ黒になる。
「蒼井!」
逆光と格闘していると、
いきなり手首をつかまれて、
そのまま引っ張られた。
階段の影の所へ走る。
「いきなりどうした。」
「先生。」
見回り…か。
「…だからって隠れる必要なくないか?携帯隠せば良いんだし…。」
「あー…そっか。」
桜井は小さく笑う。
俺は影の方から出て、
ゆっくりと階段に腰掛けた。