甘いのくださいっ!*香澄編追加しました*
ユズの親父とトキさんは
所謂、お茶の先生と生徒の
関係だったらしい。


次第に二人は引かれ合い
遂に一線を越えた関係となった。


それは極自然のことだったらしい。


けれど次期茶道の家元の相手となると
一般家庭の出のトキさんでは
不釣り合いらしく二人の関係は
次期家元の婚約が整った事で
あっけなく終わったそうだ。


それで全てが終わっていれば良かったのに
別れた後、トキさんは次期家元の子を
身籠っていることに気づいた。


そして何もかもを1人で抱え込んで
その子を生む決意をして
そして実際、1人で育てた。


ところが、何をどう聞き付けたのか
父親である次期家元が
その子を譲って欲しいと言ってきた。


丁度、子供は保育園の年長になる頃だった。


どうやら結婚した相手が
子供が出来にくい体だったらしい。


結局、抵抗虚しく
十何代と続く家を守るべく
トキさんから強引とも言えるやり方で
子供を奪ったのだ。


その子供がユズだ。


ユズは突然に変わった環境に
中々、馴染めず新しい母親にも当然
なつくことはなかった。
それは実の父親にでさえ。


その事が更に環境を悪化させていた。
けれども茶の指導だけは
進んで受けていたらしい。


ユズが言うには
こればかりは嫌いになれなかった、らしい。
遺伝子がきっちり受け継がれているのよね
と、後々、笑いながらいってたけど。


けれど事態はまた大きく変わった。
家元夫婦に諦めていた子供が
授かったのだ。


途端に自分達に一向になつかない
ユズの存在が邪魔に感じたのか
家元夫婦の態度は激変したらしい。


ユズがその家で唯一
気に入っていた離れにあった
茶室への出入りも禁止となった。


ユズは孤独だった。


そんな中、ユズは自分を着飾ることで
癒していった。


化粧を施し、こっそり小遣いで買った
ワンピースに袖を通しては
一人、楽しんでいた。


それはユズが丁度、高二の夏休みの
事だった。


いつものように部屋でこっそり
女装を楽しんでいると
突然、父親が入ってきた。


まるで、化け物でも見るような目で
一言、「汚らわしい。金の心配は要らんから
今すぐにでも出ていけ」と
言ったらしい。


そして夏休みが明けるまでに
ユズは言われた通りその家を出ていった。





















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