甘いのくださいっ!*香澄編追加しました*
「ふうん、っでお昼の和菓子の代わりに
フィナンシェってわけ?」


香澄と一緒にお昼を社員食堂で食べた後
今朝、コンビニで買っておいた
フィナンシェを頬張る。


「香澄も食べる?」


と、もう一つ買っておいた
抹茶味のフィナンシェを差し出すと


「遠慮しておくわ。
次の合コンに向けてダイエットしたいし。」


と、冷ややかな視線で言う。


「えぇーー、全然太ってないじゃん。」


香澄は今は完全にフリーで
最近、また新しい彼をゲットすべく
合コン活動に力を入れ始めた。


「そうだ、たまには気分転換に
胡桃も行ってみる?合コン?」


「えっ、ご、合コン!
きゃっ。」


いきなり、後ろから頭をポンポンとされた。


「春川さん、余計な事に
胡桃ちゃんを巻き込まないでよ。」


フワッと香る柑橘系の爽やかな匂いと
優しい響きの声で振り向かなくても
坂下さんだと分かる。


「そっかぁ、胡桃には坂下さんという
王子さまがいるもんね。」


「春川さん、王子かどうかは分からないよ。
案外、狼だったりして…………。」


と、言いながら私の座る椅子の
隣にそのまま腰を下ろす坂下さん。


「お、狼って……。」


思わず、顔が強ばる。


「胡桃ちゃん、何を今更。
よく、知ってるくせにぃ~。」


と、至近距離で顔を覗き込まれますます
フリーズ状態の私。


「なぁんだ、もうそんな仲なんですか?
邪魔物は消えますってば。
じゃあね、胡桃。
坂下さん、ごゆっくりぃ~。」


と、お気楽な様子で社食を後にする香澄。


「か、か、香澄ぃ、待ってよ。
私ももう行かなきゃ。」


と、立ち上がろうとしたら
坂下さんに腕をガシッと掴まれ
また椅子にストンと座ってしまった。


「やっと、掴まえたのに。
逃げないでよ。」









「……ごめんなさい……。」


急に真面目なトーンで言う坂下さんに
私も真面目に謝る。


「ねぇ、俺のこと避けてるだろ?」


坂下さんがトレイに乗った
ざる蕎麦をツルツルと食べながら
至って冷静な声で言う。


「さ、避けてる……って言うか……。」


「避けてるでしょ?
なんで、電話しても出ない?」


全く、声のトーンを変えずに
言いながらもツルツルと
お蕎麦を平らげる坂下さん。


こ、怖いんですけど……。


不意に食べるのを止めて
坂下さんが私をグッと見る。


「胡桃ちゃん。」


「うっ、……は、はい。」


「言ったよね?
俺、諦めないって。
サトルさんがハッキリしない限り
諦めきれないって。
忘れたとは言わせないよ?」


何となく周りの視線が痛い……。
そりゃ、社内一のモテ王子が
私なんかに詰めよっていたら
気になるよね。


「わ、忘れては……ない……かな?」


「もう、いいよ。
兎に角、胡桃ちゃんが
頑なになる気持ちも分からなくもないよ。
だけどさ、ちゃんと答えが出るまで
サトルさんがハッキリさせるまで
俺にもチャンス与えてよ。
避けられると…………正直、辛い。」


















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