甘いのくださいっ!*香澄編追加しました*
「どう?」


ユズさんが点滴を受けている部屋に
坂下さんが入ってきた。


サトルさんはどこかに
電話を掛けに行ったみたい。


「はい、点滴をすれば
落ち着くでしょうって、さっき
看護師さんが言ってました。」


「過労と風邪だってね。」


そう言いながら、
丸椅子を私の隣に置いて
坂下さんも座った。


「昔から、無理する人なんだよなぁ。」


「坂下さんもユズさん、ご存知なんですか?」


「ああ、知ってるよ。
僕の通っていた大学の先輩だからね。
サトルさんとユズさんは。」


「そうだったんですか。
坂下さん、今日、お仕事だったんですか?」


ふと、スーツ姿の坂下さんを見て
聞いてみた。


「ああ、ちょっと得意先にね。
胡桃ちゃんは今日、デート?
だったんだよね。」


と、
私のワンピ姿を見て言う坂下さん。
何となく、張り切ってお洒落している
自分が恥ずかしい。


「えっと……。」


何となく答えかねていると


「よく似合ってるよ。
そのワンピース。」


と、
優しい笑顔で言ってくれた。


「ありがとうございます……。」


何となく気まずい空気の中、
何か話さなきゃと考えていると
サトルさんがやって来た。


「ユズの具合い、どう?」


「落ち着いて寝てますよ。
まだ、熱はあるみたいですけど。」


と、坂下さん。


「そっか、坂下、色々とサンキューな。
世話になりついでで悪いけど、
そいつ送ってやってくんない?」


ん?
そいつって私?


「サトルさんは?」


「ああ、取り敢えず、暫く着いてるわ。
点滴だってまだ終わんねぇし。
それに人数いたってしゃあねぇから。」


「そうですね。あまり人がいても
迷惑になりますからね。
じゃあ、行こう、胡桃ちゃん。」


「えっ、あっ、と……。」


私が戸惑っていると


「悪りぃな。今度、埋め合わせするから。」


サトルさんは私に向かってそう言うと
目線を直ぐにユズさんへと心配そうに向けた。


「ほら、胡桃ちゃん。」


「あっ、はい……。」


坂下さんに急かされ
慌てて椅子から立ち上がった。


眠っているユズさんにそっと頭を下げると
坂下さんに着いて外へと出た。



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