幸せの天秤
祐太くんは驚いた様子でマリアから、あたしに視線を移す。


[この人って、マリア・ブラウンさんですか]

[そうだよ。アメリカにいた時の事務所の社長さんだったの]

あたしの言葉にまた驚いた顔をする。


[やっぱりレンリさんって凄い人なんですね]

[あたしは凄くないよ、凄いのはマリアだから]




「ねぇ、あたしの存在無視しないでよ」(英語)

祐太くんと話していると、マリアが入ってくる。


「別に無視はしてないよ。で、今回なんで日本に来たわけ」(英語)

「用がなきゃ来ちゃ行けないの。まぁ、こっちに来たのは仕事なんだけどね」(英語)


忙しいマリアが日本に来た理由は仕事以外ない。


「相変わらず、忙しいそうね」(英語)

「良いことなんだけどね。仕事があるからこうやって日本にも来れるし。
今回は東条の所とじゃなく、レンリの所と仕事したいと思ってこっちにきたの」(英語)


マリアはクライアントの依頼書をあたしに見せてくる。


「どう、面白そうでしょ」(英語)

「うん、やってみたい」(英語)


あたしは裕太くんにもその依頼書を見せて、説明した。


「手話?」(英語)


マリアに裕太くんのことを話していなかった。


「裕太くんは生まれつき耳が聞こえないの」(英語)

「そうなんだ。まぁ、話せるからって仕事が出来る訳じゃないからね。
どうな人だろうが仕事が出来るなら、あたしは誰でも良いけど」(英語)


マリアの意見は最もだ。

「これからよろしく」(英語)


マリアは裕太くんに手を差し出す。

あたしは、裕太くんに通訳する。


「こちらこそだって」(英語)


裕太くんは、マリアの手にソッと握り替えした。

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