幸せの天秤
「わかったか、お前らは頭が固すぎる。それを見てどう思った、青山」


「完成した所を見てみたいと」


「桐谷は」


「行ってみたいと」


東条部長は感想を聞く。


「デザインなんだ、有りか無しじゃない。
こんな場所があったらと考えなければ、一向にお前らの個性が出てこない。
この案件は片瀬さんにやって貰う。文句はないな」



「わかりました」



東条部長の意見に2人の了承した。




「あたしがやるんですか」


2人の案は棄却され、
今さっき書いた下書きのデザインになったことに戸惑う。


「俺らのより、片瀬のデザインの方が依頼者も納得すると思うし」


彼がそう言う。


彼から「片瀬」と呼ばれたのは始めてで、
あたし達はもうあの頃とは違うんだと実感した。



「わかりました」


会議が終わり、自分のデスクでさっき決まったデザインをパソコンで作る。


明日の午後には、依頼者との打合せもある。


その時に使う書類も揃えなければ。




そんなことをしているとあっという間に定時になった。

定時10分前に先ほど作った、書類達を部長に渡し、OKを貰った。


だけど、定時を過ぎたというのに誰1人帰らない。


さすがに新人のあたしが先に帰るのは気が引ける。



「片瀬さん、自分の仕事終わったなら帰っていいぞ。
ここのメンツは自分の仕事終わるまで帰らないから」



部長にそう言われ、「お先します」と、一言いい会社を出た。


< 12 / 249 >

この作品をシェア

pagetop