幸せの天秤
通帳の金額が増えるたび、あたしは人形になる。

実際お金があって困ることはないが、今のあたしには使うようもない。

服や、バックはいつも、彼らが買ってくれる。



あたしは、シャワーを浴びホテルを出る。

近くの本屋に立ち寄り、建築関係の雑誌を手に取る。


マリアや東条さんが手掛けた物件が載っている。

それを見て、どうしてあたしはここに居ないんだろうと思う。

あたしは、何処で間違ったのかさえわからない。

あたしはあたしなりに、必死で2人においていかれないように
頑張っていたつもりだった。

なのに今のあたしは住む世界すら、彼らとは違う。

あたしは手にしていた雑誌を戻し、自宅に戻る。


家に着き、ソファに横になる。

携帯が鳴り、自分を切り替える。

「レイ、今日の夜空いてるか?」

「うん。神崎さんのために空けてあるよ」

「そうか。今日会社の付き合いでパーティーに参加しなくてはならないから
レイも一緒に来てくれ。17時にはいつものところに迎えに行く」

「わかりました」

そう言い、電話を切る。

あたしは行きつけの美容院に予約を入れた。

クローゼットにあるドレスの中から、彼好みのドレスを手にする。


昔のあたしなら絶対に着ない露出の多いドレス。


ため息が漏れる。


あたしはそのドレスを着替え、美容室に向った。
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