幸せの天秤
「相変わらずお綺麗ですよ」

なんて、セットしてくれた美容師が言う。

「ありがとう」

作り笑いで、答える。

鏡の中にいる、作られたお人形のレイ。


本当の自分がどんなだったかも、今じゃわからない。


待ち合わせの場所に着くと、高級車から神崎さんが顔を出す。


「ごめんなさい。お待たせして」

あたしは車に乗り込む。


「気にするな。相変わらず、俺好みの仕上がりだ」

神崎さんは上から下まで、見て満足そうにいう。


車で15分くらい走ると、有名なホテルの前で止まる。

会場の中に入ると、たくさんの人が居て人酔いしそう。


「神崎さん、ご無沙汰しております」

「おぁ、齋藤くんか」

神崎さんは話しかけてきた30代後半の人と話し出す。


「今日は、神崎グループのショッピングモールを手掛けた
東条とマリア・ブラウンも来てますので後でご挨拶させていただきます」

「あの、マリア・ブラウンも来てるのか、早くお目に掛かりたいな」


東条さんとマリアの名前を聞き、あたしは動けなくなる。

「彼女は?」

あたしに気付き、神崎さんに尋ねる。

「うちの秘書の様なものだ」

神崎さんの言葉にあたしは挨拶をした。

「今日は楽しんで言って下さいね」


なんて笑顔で言われる。

何をどう、楽しめというのだろうか。



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